○ えんそく ○


ゼロスとロイドは、山の中を歩いていた。
今日は幼稚園で年一回の、秋の遠足なのである。からっとした秋晴れの空が青く広がっていて、絶好の遠足日和だ。
「ロイドくん、はやくはやくー!」
ゼロスは昨日から大いにはしゃいでおり、先ほどまでロイドと手を繋いで山道を歩いていたが、今はじれったくなったのか先のほうに駆けて行っては、振り返ってロイドを呼んでいる。
(そういえば夏休みは部活で忙しかったもんなあ)
あまり遊んでやれなくて、ゼロスは寂しい思いをしたのかもしれない。そう考え付いてしまうと、ゼロスの満面の笑顔がちょっぴり切なく思えて、ロイドは少し足を速めてゼロスに追いつくことにした。

・・・ちなみに、この遠足は保護者同伴ということで、本来ならクラトスが来るはずだったのだが・・・
「ロイドくん、えんそくたのしみだね!」
お知らせのプリントをもらったロイドが一緒に行くものと思い込んでいるゼロスの笑顔に逆らえるものなどおらず、
「ゼロス、私と行くのはどうだ・・・?」
控えめに申し出たクラトスも、
「えー?おれさまロイドくんとがいいー」
・・・この一言であえなく撃沈していた。
楽しんで来いよ、と送り出してくれた父の背中は、やたらと哀愁が漂っていた気がする。
あれでゼロスのことはものすごく可愛く思ってるんだよなぁ・・・と愛の伝わらない不憫なクラトスのことを思いつつ、現在。
「ロイドくん!」
「ん、どうしたゼロス?」
瞳を輝かせているゼロスにしゃがみこんで視線を合わせると、ゼロスは手に持ったものを掲げて見せた。
「見てみて、もみじ!」
小さな手の中に握られていたのは、一枚の葉。綺麗な紅に色づいたそれを、ゼロスは自慢げに振って見せた。
「きれいでしょー」
にっこりと笑うゼロスにつられて微笑み返し、頭を撫でてやる。するときゃあっと歓声をあげる様子がとても微笑ましい。
「そうだな、ゼロスの髪と同じ色だもんな」
「えへへー」
嬉しそうなゼロスを見ていたら、なんだかこちらまで嬉しくなってしまう。
「よーし」
「わっ」
思い立って、肩車をしてやったら、さらに高い歓声が上がる。
実は周りは若いお母さん方が多くて気が引けていたのだけど、ゼロスにこんなに喜んでもらえたなら、来てよかったなと思う。
来年もクラトスには悪いけれど、遠足の保護者の座は渡さない、と固く心に誓ったロイドであった。



けんか